15年以上消防士をしていた、100日後に辞める消防士です。
その内10年以上は救急車に乗っていました。
本日はお正月の食卓で守りたい「安全」の話。
お正月といえば、家族が集まり、楽しい時間を過ごす特別な季節。
その中心に欠かせないのが、お餅です。
けれど、この大人気の食材には思わぬ危険が潜んでいます。
毎年、年末年始になると、お餅による窒息事故のニュースが耳に入ることも。
私自身、この時期に窒息事故の対応をした経験があります。
楽しいひとときが一転、悲劇に変わらないように、最後まで読んでください。
お餅による窒息事故の現状
発生件数と背景
消防庁のデータによると、毎年数十件から100件前後のお餅の窒息事故が報告されています。
そのうち死亡例も珍しくありません。
特に高齢者に多く発生し、年末年始の短い期間に集中しています。
お餅の粘り気や弾力が要因で、飲み込む力が弱い方にとってリスクが高い食材です。
お餅が喉に詰まる原因と症状
なぜ詰まりやすく他の食品と比較して危険なのか?
お餅はその独特な粘り気が特徴ですが、それが危険の引き金になります。
噛まずに飲み込もうとすると、ドロドロとした塊りの状態で喉や気道を完全にふさいでしまうことがあります。
特に注意が必要なのは以下の方々です
- 高齢者:飲み込む力や噛む力が低下している
- 小さな子ども:嚥下能力が未熟である
喉のあたりで食べ物と空気の通り道に分かれています。
口から入った食べ物が、誤って空気の通り道の方に行ってしまうのです。
万が一詰まった場合に起こること
お餅が気道をふさいでしまうと、次のような症状が急速に進行します。
【初期症状】
• 咳き込む
• 顔が赤くなる
• 首元を押さえる仕草(チョークサイン)が見られる
【中期症状】
• 声が出なくなる(喉が完全にふさがれるため)
• 顔が青白くなる
【重篤な症状】
• 意識を失う
• 心停止
この間、わずか数分。
1分1秒が生死を分けます。
窒息事故は超緊急事態。
ですが、早期発見し原因が解除できれば救命の可能性はあります。
お餅の窒息を防ぐための3つのポイント
1. 小さく切る
お餅を食べやすいサイズに切り分けて提供しましょう。特に高齢者や小さな子どもがいる家庭では必須です。
2. よく噛むことを意識する
「よく噛んで食べる」という基本的な習慣を見直すことが大切です。お餅に限らず、食事の安全性が格段に上がります。
3. 周囲の見守りを徹底する
食事中、目を離さないことが大切です。特に高齢者や子どもが多い集まりでは、みんなで注意し合いましょう。
万が一お餅が詰まったら?
意識がある場合の応急処置
1. 背部叩打法(ハイブコウダホウ)
• 背中の真ん中を力強く叩き、咳を促します。
2. ハイムリック法(腹部突き上げ法)
• 詰まった人の背後に立ち、おへその上をこぶしで強く圧迫します。
意識を失った場合の対応
• 胸骨圧迫
• 胸の真ん中を1分間に100回のペースで深さ5cmほど圧迫します。
やってはいけないこと3選
窒息時の対応には注意点があります。次の3つは絶対に避けましょう。
救急隊が来れば、喉頭鏡やマギール鉗子、吸引器といった特殊な資機材を使用して異物除去を試みます。
119番通報の手順を知ろう
迅速な対応を支えるのは、落ち着いた通報です。イメージトレーニングをしておきましょう。
例:通報の流れ
• 消防:「119番消防です。火事ですか?救急ですか?」
• あなた:「救急です。」「住所は○○町○丁目○番地○○です。」
• 消防:「どうしましたか?」
• あなた:「お餅が喉に詰まりました。○歳の男性です。」
その後、状況に応じて応急処置について指示を受けるので従いましょう。
家族など、周りに複数人がいる場合、以下のように役割分担をするのが理想です。
- 救急車を誘導する(家の前に出たり、マンションのエレベーターで待っておく)
- 応急処置を行う(オペレーターの指示に従う)
- 救急隊員のためのスペースを確保する(部屋の中の整理や運び出す導線を確保する)
- 病院へ向かう準備をする(保険証、お薬手帳、衣服など)
イメージしているだけでも大きな違いがあります、一度シュミレーションしてみましょう!
まとめ
お餅は美味しいだけでなく、お正月の風物詩でもあります。
しかし、その一方で窒息事故の危険性も併せ持っています。
ぜひ「安全」を意識して、楽しい年始をお過ごしください。
少しでもお役に立てたら、幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。